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横浜地方裁判所 昭和37年(ワ)945号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告と被告代理人渡辺清とが、昭和三七年四月八日、別紙物件目録<省略>記載の土地建物を目的として、原告が買主、被告が売主となつて、代金一〇、六〇〇、〇〇〇円で売買契約を締結したこと、右売買物件は、被告において原告主張のとおり競落事件で競落したが、未だその所有になかつたものであること、右売買代金のうち金三、五九九、二〇〇円が同年五月五日までに原告から被告に支払われていることおよび原告が競落代金の不納付により同年一〇月一〇日再競売に付された右売買物件を競落し、原告主張の経緯により右売買物件の所有権を取得したので、被告が右売買物件の所有権を取得して原告に移転することが不能となつたことはいずれも当事者間に争いがない。

そこで、右履行不能すなわち原告が競落により本件売買物件の所有権を取得するに至つたのは、被告に原告主張のような義務違反行為があつたことによるものであるかどうかについて検討する。

本件売買残代金は、原告において被告から競落残代金等の納付、競売裁判所の登記嘱託等に必要な書類の交付を受けて、被告名義で競落残代金等を納付することによつて、支払うことと約されていたこと(原告の、必要書類の交付と引換えに競落残代金の納入ができるよう売買残代金を支払う旨の主張は、被告が必要書類を原告に交付してなお、被告が競落残代金を納付するということは撞着であり、右主張は前示趣旨と解される)および被告が右必要書類を用意し、原告に交付することが約されていたことは当事者間に争いがない。

また、被告から原告に対し、昭和三七年八月三〇日の競落残代金払込期日の呼出状および原告主張の通知書が郵送されたことは当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すれば、渡辺清は被告の夫であるが、本件売買契約に関し、一切を被告から委任されて行動していたものであること、渡辺清は、右競落残代金払込期日呼出状等が原告に郵送された二日後程に、原告に対し、右払込期日につき確認の電話をしたのに対し、原告は右払込期日に競売裁判所である横浜地方裁判所に競落残代金等に相当する本件売買残代金を持参して出頭する旨回答したこと、原告は右払込期日である昭和三七年八月三〇日競売裁判所に本件売買残代金を持参して出頭し、渡辺清の出頭を待つたが、出頭がなく、競落残代金等納付に必要な書類がないため、これの納付手続ができないまま帰宅したこと、被告および渡辺清からは右電話以外に、原告に対する連絡は、右払込期日まで、および同日以後再競売期日である同年一〇月一〇日まで何等無く、原告から右払込期日以後渡辺清に対し電話するも連絡が付かなかつたこと、ならびに原告は再競売期日三日前に、本件売買を当初仲介した木村庄次外一名の連絡を受けて、本件売買物件を競落する運びとなつたものであることが認められ、これに反する証人渡辺清の証言部分は前掲証拠に比照したやすく信用できない。≪中略≫

以上の事実よりすれば、被告は、その責に帰すべき事由に基き本件売買物件の所有権を競落により取得することをできなくしたといわなければならない。

ところで、一般に、他人の権利を売買の目的とした場合において、買主が売主を介さないで直接当該権利を取得して、売主が当該権利を取得して買主に移転することを不能にしたときは、その責は買主にあるというべきであり、売主は民法第五六一条所定の担保責任を負うことのないことはその性質上当然である。しかし、本件のごとく、競落により将来取得する所有権が売買されながら、売主の責に帰すべき義務不履行により競落による当該所有権取得が不能となつた場合、そのまま放置しては買主において当該所有権を取得できなくなるおそれは大であると見なければならないから、買主において再競売手続において競落し、これを取得するのは、相当の行為というべきであり、かつ売主の不履行に基因するものというべきであるから、買主の右行為による売主の履行不能につき買主はその責を免かれるものといわなければならない。

そうすると、原告は本件売買契約につき民法第五六一条所定の解除権を取得したこと明らかであり、原告が被告に対し、昭和三七年一一月二日付内容証明郵便をもつて右解除の意思表示をなしたことは当事者間に争いがないから、これにより本件売買契約は解除されている。(豊島利夫)

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